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最高裁判所第三小法廷 昭和32(オ)594 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人野村幸由の上告理由について。

記録によれば、上告人は、はじめ、被上告人に対し同人が自己の賃借地を不法に

占有していると主張して、賃借権に基づき建物收去ならびに土地明渡を請求したが、

右請求に対し、被上告人が、三万円の代金を支払つて上告人から賃借権を譲り受け

たと抗弁したので、上告人は、第一審に訴訟係属中、対価の点を除き右抗弁を是認

して、被上告人と締結した賃借権譲渡契約に基づき七〇万円の譲渡代金の支払を求

める旨訴を変更した。そして、原審にいたり、さらに右請求の趣旨を拡張して譲渡

代金一〇〇万円の支払を求め、次いで、前示賃借権譲渡契約の解除に基づく原状回

復として賃借権の価格一〇〇万円の償還を請求する旨訴を変更したものである。

このように上告人が数次にわたつてした訴の変更は、仮りに請求の基礎に変更が

あるとみるべきであるとしても、被上告人が上告人の当初の請求に対して提出した

抗弁の内容たる賃借権譲渡契約の事実をもつて更めて新請求の原因もしくはその一

部として主張するものであるから、民事訴訟法第二三二条所定の「請求ノ基礎ニ変

更ナキ限リ」という要件の欠缺は充たされたものといわなければならない。しかし、

同条によれば訴の変更は請求の基礎に変更はないとしても、訴訟手続を著しく遅滞

せしむべき場合は許されないものであり、この点につき、原審が、上告人の新請求

を審理するには、賃借権譲渡契約の内容およびその履行の有無、賃借権の価格等に

ついて新らたに審理をしなければならないのであるから、これらの点について新ら

たに証拠調を要するわけであつて、弁論の全趣旨から考えると、これらの審理によ

つて訴訟手続は著しく遅滞するものといわなければならないとした判断は、記録上

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十分に是認しうるところである。そうとすれば、原審が上告人の訴の変更をすべて

許さないとしたことは結局正当といわなければならない。所論は採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 五 鬼 上 堅 磐

裁判官 河 村 又 介

裁判官 垂 水 克 己

裁判官 高 橋 潔

裁判官 石 坂 修 一

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